扇澤 郁選手 世界選手権直前インタビュー |
2001/06/09UpDate
■2001年5月26日 インタビュー:Pikaichi
試乗会とクラブ大会のお手伝いを兼ねて、扇澤さんが久々に立山に来てくれました。この機会に、世界選への思いなどをお伺いしました。
Pikaichi
今回で5回連続出場と言うことになりますが・・・
扇澤
93年のベルビエ大会からですからそう言うことになりますね。まぁ、今の日本の選考システムであれば、世界選手権に選される方は、実力通りのメンバーになるんじゃないかな?実際、今回のメンバーも常にヨーロッパで飛んでいる訳だし、当然と言えば当然なんですよね。逆に、それくらいの気持ちがないと、世界選には出られないと思いますよ。
Pikaichi
今回の日本チームはかなり期待が出来ると思いますが、扇澤さんから見た日本チームについて教えて下さい。

インタビューに答える扇澤氏
扇澤
昨年までのFAIランキングはTOP4に入っているし、実際の実力も4位と言う所でしょう。ですから、いかに3位に食い込むかが課題になってきます。それには、大会のチームのムード、モチベーション、リーダーのまとめ方などに比重がかかってくる。また、全員がポイントゲッターにならなければならないので、ソツなくミスなく行かなくてはならないし、一人でも欠けるととても苦しい状況に追いこまれてしまう。例えば、前回の世界選は初日に成立し、その後は不成立続きだった。そんな中でも日本チームのあらゆる面でのケアは出来ていました。
ですから、前回と同様にその辺のケアが出来ていけば、良い結果に結びつけることが出来ると思います。
Pikaichi
CS番組のインタビューでは、「チームで勝つ」ことをしきりに強調されてた印象を持ちましたが・・・。
扇澤
そう。国別で3位。チームで表彰台に立つ事が目標です。世界選は、チームで無線交信が許されている大会ですから、日本チームの組織プレーの良さを生かしながら戦いたい。日本はそう言う組織プレーはとても良いんですよ。
例えば、今回出てくる各国を見ると、かつての強豪だったイギリスは、例の伝染病騒ぎで飛べてないし、グライダーに関する規定があってシリアルクラスの機体で参加するから苦しいでしょう。フランスは強いが、個人技の印象が強く選手もワガママだから、組織力と言う点では疑問が残ります。スイスは名実ともにトップだろうし、組織力も素晴らしい。オーストリアもそれに近いものがありますね。
そうなると、いかにフランスを落とすか(笑)ってことになる。まぁ、ドイツには勝てそうかな?もし、フロッグがあるとすればアメリカでしょうか?

クラブ員にテイクオフを指導する・・・
Pikaichi
チームで表彰台と言うことですが、個人的にはどうですか?
扇澤
全員が全タスク10位で良いんです。気負ったらダメ。TOPを取る必要はないんです。仮にTOPを取り続けていても、1本のタスクでミスをすればそれをフイにすることも過去の世界選では良くあることです。それよりも、コンスタントに上位に入ってソツなく得点を重ねるほうが最終的には良い結果になる。97年のジョンペンドリーもそうでしたね。
日本チームでは、若手の辻、只野、川地らが気負わないようにケアして行く事が大切かなぁと思っています。
Pikaichi
私も大会にはよく出ていましたが、タスク前だと緊張しますよね。世界選ならなおさらだと思いますがいかがですか?
扇澤
緊張はしません。大会は一発勝負ではありませんからね。ましてや世界選は2週間あります。そう言う意味では、普段の生活が最も大切ですね。私達日本チームは、常に世界選を考えた生活をしています。あらゆる事態を想定した時の心理的な状況や、それに対処する術など。世界選だからと言って、特別なことをしたり、お祭り騒ぎをすると、普段の生活からかけ離れてしまいます。
普段通りが大切ですし、その普段通りが世界選を想定したものなので緊張しないと言うことですね。
Pikaichi
今、日本で一番盛り上がっている大会と言えば「F1リーグ」ですが、その選手達にも何かアドバイスを頂けませんか?
扇澤
今のJリーグは正直なところ、かなりレベルが上がっています。特に、トップ連中は世界レベルにありますから、一般のパイロットにはとっつきにくい状況にあるのは確かでしょう。
ただ、技術的なことやノウハウはJもF1も同じ。普段の生活からパラの状況を考えて、細かいことの行い方、例えば写真の撮り方やカメラ等の機材へのケアなども含めて、無駄のない行い方をすれば成績が出ると思いますよ。ある意味、要領が良くないといけない。(笑)仕事でもそうでしょ?
世界選では、一つの判断が生死を分ける場合もあり得る訳です。例えば低くなって苦しい状況にいた時に、どうにも上げられないような危険な状況の中で、エスケープするかリスクを背負うかなどね。右に旋回したら上手く逃げられたのに、欲をかいて左に旋回してローターに揉みくちゃにされて落ちたとか・・・。
F1の選手にはそこまでは求めませんし、日頃の生活の中で100%がパラの時間に使える訳ではないでしょうが、日頃のちょっとした時間の中でも、雲を見たりイメージしたりすることも出来ると思います。
そう言うことを続ける事で、良い結果が出せるようになるんですよ。
Pikaichi
先ほど、日本チームは組織力が素晴らしいと言う趣旨の話がありましたが、その要となるのはチームリーダーだと思うのですが。
扇澤
そう。チームリーダーの役割はとても重要です。選手とチームリーダーの信頼関係がなくては絶対にダメです。例えば、無線交信が許されている訳ですから、サポートしているチームリーダーが「扇澤、あそこの山に付いて見ろ」と指示を出したとしますよね?でも、そこはどう言う状況にあるのかはわかりません。ましてや、地上から見ている訳ですからね。でも、この指示一つをとっても、チームリーダーは扇澤と言う選手の技量や考え方や性格までも把握していて、万一危険な場合は自分で判断して最良の選択をすると言うことをわかった上で指示しているのです。これが、どの程度の技量でキッチリ判断出きるかどうかわからない相手だったらそんな指示は怖くて出来ない。
そう言うことを、選手もチームリーダーもお互いに分かり合っているからこそ、組織力が生きてくると思いますし、それが出来るチームリーダーと言うことになるでしょうか。
それから、世界選手権では「チームリーダーズミーティング」がありますが、ここでもいろんなバトルが繰り広げられています。やはり、どこの国も勝ちに来ていますから、互いの利害が一致しない。文句を言うところはいつも文句を言う訳ですよ。そんな中でも、チームリーダーがしっかり発言して、意志を確実に表明することも、とても重要な役割になります。
Pikaichi
今回はBoomerang2で参加される訳ですが、Boomerangについて一言。

壮行会にて・・・
扇澤
Boomerang2になって更に良くなりましたよ。具体的に言うと、今まで浮きが足りなかった分が良くなったし、スピードを出した時の浮きも更に良くなった。ただ、今回の世界選に出場する選手の大半はBoomerang2なので、グライダーによるアドバンテージと言うのはないですね。実力の世界になるでしょう。TOP50人居たら、みんなBoomerang2なんじゃないの?(笑)
Pikaichi
世界選は2週間の長丁場ですが、その間の楽しみってどんな事がありますか?
扇澤
選手は王様です。(笑)
今回も選手7名、サポート10名で行くんですが、「俺は選手だぞ!!」みたいな至れり尽くせりの状況ですよ。勿論、そのために2年間頑張ってきたんだから。
そう言う意味では、逆にチームリーダーが我々選手を「試合に集中出きる環境」を作ってくれると言うことでしょうか。チームリーダー自らが食事も作ってくれますからねぇ。(笑)
あとは、スペインの赤ワインとイベリア地方で飼育した豚のハム(ハモデイベリコ)が無茶苦茶上手いんですよ。これは楽しみの一つだね。やっぱり。
Pikaichi
今年は期待していいですか?
扇澤
普段通りにやりますよ。変に気負ってないから大丈夫。(笑)
Pikaichi
立山の生んだ世界の扇澤郁として、私達のクラブの良き目標であり指導者であり先輩である扇澤郁として、世界選を思う存分に戦ってきて下さい。今日は本当にありがとうございました。