F15は、元々登場する予定にはありませんでした。機体を3機作るのが精一杯の状況で、更に空中演技の訓練や地上演技訓練を行う必要があった訳ですから当然と言えば当然です。が、実際には作って飛ぶことになったのです。

そもそもの言いだしっぺは委員長の塚本氏。「F15が作りたい」と言う個人的な?思いでその話が持ち上がり、「本番には間に合わないだろう」と言う予想で「作る分には構わない」と言うことになりました。どうせ作るならカッコイイ方が良いのは当然で、「塗装は特別塗装機で・・・」と注文を付けたのが藤野でした。

 
自衛隊創隊50周年記念特別塗装機(小松基地第306飛行隊所属)
 

この特別塗装機ですぐに思いついたのが、「航空自衛隊小松基地・第306飛行隊所属機」でした。2004年の小松航空祭に行った時に実機を見て、「カッコイイ」と思っていましたから。また、「小松基地所属」と言うのもポイントでした。飛ぶ・飛ばないは現段階では微妙でしたが、石川県の獅子吼高原ですから、石川県の機体が似合うに決まってますからね。塚本委員長は写真を見て製作に入ったようです。それが本番の10日前のことでした・・・。

本番1週間前には、F15の部品がエリアに搬入されました。一部は製作途中の段階でしたが、機首や胴体後部などはこれから製作することになりました。ただ、T-4のようにスモークを出したり細かい仕掛けをする必要がないので、とにかく仕上げてしまえば飛べるかもしれないと言うことで、みなさんに協力していただき急ピッチで完成を急いだのです。特別塗装機と言うことですが、デザイン的には比較的楽なものですが、主翼下面のデザインだけは苦労しました。ほとんどフリーハンドでの製作でしたから・・・。

 
製作中のF15
 
本番に間に合う目処がついてきたので、後は「どうやって飛ばすか?」を考えなければなりませんでした。立山インパルスがメインですから、これが目立ってしまっては困ります。あくまでおまけです・・・。パイロットも誰にするかと言う話になりましたが、藤野が乗ることになりました。そこで段取りとしては・・・

 1.F15は立山インパルスの演技終了後に「スクランブル発進させる」
 2.パイロットの藤野は、ナレーションを終了して機体まで走る
 3.5分以内にテイクオフする(スクランブルは5分以内に離陸することになっている)

と言う方針に決まりました。

機体制作上でちょっと凝ったのはアフターバーナーと翼端のベイパー。アフターバーナーと言うのは、ジェットエンジンの噴射口に再度燃料を噴射し排気熱で更に推進力を得る装置で、まさに噴射口から炎が噴出すアレです。これはカラーテープで表現しました。ベイパーは、F15の翼端から筋状に現れる霧。高速になると、翼端には翼上面と下面の空気がぶつかり、水蒸気が発生して筋上の霧が見えるんです。これは紙テープを取り付けて表現しました。あれはスモークではないですからね。(念のため)
その他にも、塚本委員長拘りの機首やキャノピー形状など凝りに凝った作品になっています。「一番出来が良い」と評されたのも頷けます。
 
本物のベイパーと紙テープのベイパー
 
F15では、本番前日にテスト飛行を行いました。飛行状態も良好で、金山でソアリングも出来ました。

地上訓練は1回だけ行いましたが、ほとんどぶっつけ本番。当初の打ち合わせでは、F15はテイクオフ南側の上部に置いておき、スクランブルが司令されてからクルーが機体を運んでセットアップするハズでした。が、実際は立山インパルスが演技中に、気の利いたスタッフが機体を運んでセットしてくれました。ありがたいようなありがたくないような・・・微妙な状況でしたが、ここは「ありがとう」と言うべきでしょうね。
 
テスト飛行
 
スクランブルのナレーションは、結局本番初日にクルーの渡辺祐子ちゃんにお願いしました。やはりナレーションがあるのと無いのとでは大きな違いですからね。

こうして、本当は作るはずの無かったF15が登場することになったのでした。
 
 
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